特定非営利活動法人
NPO日本食育インストラクター協会


NPO日本食育インストラクター1級取得者インタビュー企画⑤:小櫛和子さん

長年静岡県富士市の食育活動を盛り上げ、今や多くの組織の代表を歴任され、
富士市の食育活動のまさに中心にいらっしゃる小櫛さんにお話を伺いました。

Q. まず、現在の食育活動を始められたきっかけからお話いただけますか。
静岡県富士市では、1987年に市民団体「富士市学校給食を考える会」(2017年に「NPO法人ふじのくに学校給食を考える会」に移行)が設立しました。約60人の会員の中で「現役のお母さん」ということで代表に選ばれたのがきっかけでした。
子ども達の食生活の乱れが心配された中で、食教育を「学校給食」でしっかり行い、子ども達から逆に親の方に「食べることの大切さ」を伝えないと、これから取り返しがつかなくなると感じていました。一方で学校給食は、効率優先・コスト削減のため、大規模センター化や調理の民間委託が進んでいました。
しかし、私の住んでいる富士市は、自校直営方式の学校給食を行っていました。この自校直営方式が大切なことを伝え、地元の農産物、畜産物、水産物を使う「地産地消」を進めることで、地域が一体となって、子ども達に安心安全な給食を提供できることを目指してきました。この「食育活動」が、いつの間にか私のライフワークになりました。

Q. 現在の食育活動の中で、いくつかご紹介いただけないでしょうか。
食農体験が注目され始めた2008年に、地域の農業体験提供者と連携して「ふじ食農体験交流協議会」を設立しました。「田んぼの学校」「ホタルの学校」「畑の学校」など、親子での農業体験や、大学生のゼミの農業体験の場を提供しています。
「富士市学校給食等地場産品導入協議会」では、2020年から会長として、学校給食での地産地消の推進に力を注いでいます。「生産者の出前授業」を小学校12校で28回実施、そして「100%地元産給食の日」の実現など活発に活動しています。私は、生産者、流通業者、また学校側にと、食育活動の意義を伝えながら日程調整などが主な役割ですが(笑)。
出会った生産者の方々が大切にしている思いを消費者に届けたいと、2013年に「合同会社とれとれ富士山」を起業し、地元食材のフードコーディネーターとしてもがんばっています。
また、昨年はじめて、サツマイモを200坪くらいの畑で作りました。苗植え、草取り、虫取り、収穫、選別等、福祉施設の子ども達に手伝ってもらい、親子の収穫体験の場として提供でき、楽しい活動になりました。



Q. 食育活動で、今後の課題と感じておられることなどあればお願いします。
生産現場を知らない消費者が増えています。スーパーに並んでいる形の整った野菜が当たり前で、不揃いな野菜が出来ることを知らない人、想像もできない人が増えています。作物も、経済合理性の中で動いています。時として、地元でとれたものが都心の中央市場にいって、そこから地元に戻ってくることもあります。
今まで以上に地産地消を意識して、生産者と消費者の距離を近づけるための具体的な取組を考えていきたいと思います。

Q. 食育インストラクターを目指された理由をお聞かせください。
活動を始めた当時は、「食育」という言葉も「地産地消」という言葉も使われていませんでしたが、「食育基本法」が制定されたことで世の中が大きく動いてきました。調理実習や講演会などを行う際にも食育について正しく、わかり易く伝えられるように食育インストラクターを目指しました。今後も機会があれば、食育インストラクターとして、講演会などを通じて、食の大切さ、農業の大切さを色々な年代の人に伝えていきたいです。



Q. 最後にプライベートをどのようにお過ごしか伺ってもよろしいでしょうか。
女声コーラスをしています。コロナ禍で合唱の練習場所を確保するのに苦労しますが、全国おかあさんコーラス静岡県大会への出場を目指して、練習に励んでいます。そして何よりの楽しみは、毎日の食材を地元の生産者のところへ直接買いに行き、その生産者と直接話すことです。好きですし、大切ですね(笑)。
食育に関するいくつもの集まりの代表を務められ、そこでの多くの食育活動を紹介いただきました。地域を巻き込んでの長年の活動、活躍は、私たち食育インストラクターの今後の食育活動に大変参考になりましたし、大いなる希望であると思いました。益々のご活躍をお祈り申し上げます。どうもありがとうございました。

NPO法人ふじのくに学校給食を考える会
ふじ食農体験交流協議会
富士市学校給食等地場産品導入協議会
合同会社とれとれ富士山

多くの生産者の方々による出前授業での1コマ1コマ
(小櫛さんが写っている写真はありませんが、各協議会等のホームページにて)

多くの生産者との食育出前授業

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